福岡アジア美術館でアジアポップ展

帰省で九州に帰っている。

福岡空港に着いてすぐこの梅丁衍のポスターを見かけ、予定にはなかったが急遽弾丸で福岡アジア美術館へ行くことにした。


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福岡アジア美術館に来るのは初めてであったが、福岡アジア美術館が発刊している図録や書籍は大学院生の頃よく研究で参考にしていたので、実際に美術館で展覧会が見れてとても嬉しかった。

 


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今回の展示は『アジアン・ポップ』と題し、様々なアジアの作家の作品が展示されていた。

やはり私は東アジア、特に中華圏の作品が気になるので今回記録できることはそれに絞られる。


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中国の現代アート作家の作品はそれほど多くはなかったが、膨大な数のポスター(広告?)が展示されていてそれを観るのが楽しかった。

ポスターには何かスローガンが書かれているのだが、振り仮名は当たり前だが拼音で振られており、中国の人は漢字以外にアルファベットの概念も同時に会得していたのだな等と考えながら見ていた。

因みに台湾はㄅㄆㄇㄈという日本でいう平仮名カタカナのようなアルファベットがあるので、日本と同じようにㄅㄆㄇㄈ→漢字の順で覚えていく。

 


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台湾からは吳天章、梅丁衍、楊茂林の作品が展示されていた。

どの作家の作品もおそらく初めて実物を観たのでとても嬉しかった。特に梅丁衍の作品はずっと観たかったが台湾で暮らしている時もタイミングがなく観れないままであったのでゆっくり隅々まで鑑賞した。

彼の作品はとてもセンシティブなテーマを扱っている為か、作品自体の仕上がりを見ても神経質なほどに完璧である。他の作品もまた観る機会があれば観たい。

 


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気になったのはこの作品。作家曹斐の〈Public Space: Give Me Kiss〉だ。

キャプションに書かれているよう、おじさんが踊っている映像の後ろで明るい中華ホップが流れている。おじさんはずっと自己流の踊りを踊りながら今風に言うなら通りがかった人々にファンサービスをしている。話しかけられたらにこやかな笑顔で答えている。ただほとんどの人は避けるようにその道を通り、おじさんから手を振られても目も合わせない。(当たり前ではある。)

私はこのような明るく、どこか物悲しい作品が大好きだ。おじさんの姿に自分を重ね合わせる。愛想を振りまく自分、それでも人とうまくコミュニケーションが取れない自分、めげずに明るく振る舞い続ける自分。人生はこの繰り返しなのかもしれない。

 

 


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またコレクション展では、塩月桃甫や楊三郎の作品があった。小作ではあるが、国内でこれらの作家の作品を観れることは早々ないのでとても嬉しかった。

月桃甫の大胆なタッチで描かれる台湾の風景、楊三郎は西洋風の処理の仕方で台湾の景色を美しく切り取っている。どちらも両方の作家が描いた「台湾」である。台湾らしさが存分に表現されている作品は私の台湾での記憶を呼び起こしてくれる。

 

 

さて、展示を見終わり展示スペースを出ると図書館とカフェが併設されたような空間に出た。

この美術館にそんな場所が設けられているとは知らなかったので、とても驚いた。

私は植民地時代の台湾美術史や、全く専門的に勉強していないが韓国美術史に興味があるので、数冊の本をペラペラとめくり、数冊の本を東京へ帰ったときに探すためメモした。


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また、院時代に、台湾美術史の先生にわざわざ借りて期末エッセイを仕上げたという思い出の詰まった図録があった。購入できたので買った。

 

 

今回チケット代は200円のみで、図書館スペースは勿論無料であったので、この美術館の豊かさに感動した。また必ず他の展示を観に来ようと思う。

 

 

 

 

 

アーティゾン美術館で展示3つ


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特に期待せず、たまたま昨日ツイッターで見かけたので来た展示だったが、とても良かった。

 

最上階は山口晃の個展。(でいいのか?)

その下はブリヂストンが所有する日本近代美術作家の作品と映像アーカイブ

そして最後の階は、常設と山口晃の展覧会に関連した作品の展示、読書をする女性がモチーフになった作品を集めた展示。

 

どの展示も見応えがあり、また最終日にも関わらず人もそこまで多くなかったことが良かった。

 

展示は殆ど写真撮影OK、(おそらく)山口晃の展示はスケッチもOKという環境。

流石にスケッチできるような空間はなく(あっても私はしなかっただろうけど)しかし許可されているということが、展示の空間にゆとりを持たせていたように感じる。


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山口の作品の中で最も印象に残ったのはこの作品。

これは今年見た作品の中でも1、2を争うほど大好きな作品になった。

 

山口自身の作品以外にも山口がピックアップした作品と山口直筆の解説が一緒に飾られており、自分で鑑賞した後解説と感想を見比べることが楽しかった。


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次の展示は日本近代美術作家の作品と映像アーカイブだったのだが、これが素晴らしかった。

以前梅原龍三郎を少し研究したことがあるので、実際に本物の作品を観ることはとても幸福であった。

また、梅原が制作している様子を今まで見たことがなかったので、16分の映像アーカイブはとても興味深かった。

映像の中での梅原はおそらくデトランプを用いて制作しており、最も興味のある梅原の時代である。

アトリエの中には仏像と中式の花瓶のようなものがあるのが印象に残った。


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展示されていたデトランプを用いた作品はとても状態が良く、一昨日描かれたと言われても疑わないほど色が鮮やかで、背景の金が美しい。

とにかく梅原が好きな私にとって、大変満足な展示であった。

 

最後の階の展示も良かった。

というより人が少なかったのでゆったり大きい絵画を鑑賞できたことが嬉しかった。

特に抽象絵画はゆったり観ないと私はよく分からないので、今日のような環境でどの展示も見たいと心から願った。

 

藤島武二の作品を見れたことが最も嬉しかった。


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この作品の向かいにマネの自画像があったのだが、藤島の仕事とマネの仕事の対比がとても面白かった。

藤島は真面目に画面をきっちり埋め、マネは抜き方が上手い。

この作品たちを交互に鑑賞できたことがとても良かった。

 

 

 

久しぶりに満足する展示に行けてとてもハッピーである。

 

台北市立美術館でエドワード・ヤンと何德來の展覧会


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エドワード・ヤンの展覧会を目当てに行ってみたら、なんと何德來の展覧会もやっており、大変オトクであった。チケット30元。(日本円で138円)

 

エドワード・ヤンの作品は、【ヤンヤン 夏の想い出】以外観たことがない。

ただ、台北市立美術館は展示スペースが大きくて広くて高さがあるので、映画監督の回顧展をどう展示するのか気になり、作品を観たことあるかないかどうであれ必ず行こうと決めていた展覧会である。

そもそも、この美術館の展覧会はどんな内容でもスケールが大きくて観ていて楽しい。

 


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牯嶺街少年殺人事件から始まる。

台本、実際に使った小道具、ポスターなどだけではなく、実際の映画の映像に合わせたインスタレーションが展示されていた。

 

映像が投影されているスクリーンは大きく、たっぷりと空間を使っている。

素晴らしい。

 


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他の作品も同じように大きいスクリーンに映している。

 


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所蔵していた本やビデオを観るのも楽しかった。

 

ただ関連する台本や小道具やそういった細かいものを平たく机に奥岳の回顧展かと思いきや、きっちり展覧会としてモノを見せている展示の仕方に感動した。

 


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何德來については次に…

 

 

 

 

アーティゾン美術館で抽象画の展覧会


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値段は2000円、最終日で人多し。夕方から入館。

今月頭に行ったマティス展に比べると大分見やすくは感じたが、作品数が多いため作品と作品の間の感覚が詰まっているのが気になった。

尚且つ隣り合ってる作品が同じ作家とは限らなかった壁もあり、作品同士の響き合いが気にはなったが、それでもマティス展よりはマシだった。

 

セザンヌ印象派から始まり現代の作家で終わる構成でとても分かりやすかった。

タイムラインになっている展示、特に今回のように東西の作品を多数展示していると、同時代性を感じ取れやすいので好きだ。どの時代のどの主義に自分が興味がないのかも分かる。

 

結局今回もブラック、マティスピカソは分からなかった。大学時代から分からなくて苦手意識が消えない。いつか分かる日が来るのだろうか。

 

ル・コルビュジエの絵画やカンデンスキーと聞いて浮かべるあのスタイルではない絵画(1908年に描かれていた)が観ることが出来て嬉しかった。

また、修論で少し触れたジャン・デュビュッフェの作品も数点観ることが出来た。作家研究は多少していたが、実物を観たことがなかったので嬉しかった。

津上みゆきのアイデアスケッチも面白かった。あんな私的なドローイング(に私は思えたが)を世間に公開してくれて感謝。

写真も何人かの作家を展示していた。

抽象は難しい。

 

美大生のような人が多かったので、教授たちが観にいけと行っていたんだろうなと思いながら歩いていた。美大生に戻りたい。

 

 

画面のマチエールを観ることが楽しい。直に作品を見れる幸せはここにある。

 

 

画面の中に絶妙なバランスで文字を入れているこの2点、好きだ。


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抽象画は印刷物との相性がいいと思った。羨ましい


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アーカイブ室で過去の図録や研究紀要が読めるようになっていたのでまた行こうと思う。

藤島武二の図録とチャイナドレスにフォーカスされた研究紀要が気になる。

国会図書館にあるのかな。あるならそっちでも良いのだけれど。